松の煤

夏の暑い日、おばあさんの畑に大きなスイカが実った。

犬は必死につるを噛んで、スイカを収穫しようとした。

おばあさんは倉庫から古い木製の押し車を持ってきた。

「積み木はどこかへ行っちゃったけど。」

そこにはかつて三角や四角の積み木が枠に収まっていた。

おばあさんはつるを切って、どっこらしょとスイカを押し車に乗せた。

犬は頭で押したり、持ち手を噛んだりした。

しばらく迷ってから、両前足で器用に車を押し始めた。

「ケンちゃん上手、上手。」

おばあさんは喜んで手拍子した。

暗くなると、おばあさんは引き出しの中から長い袋を取り出してきて庭に出た。

マッチを摩って、ロウソクと蚊取り線香に火をつけた。

やがて焦げる匂いと共に、パチパチと音がして、縁側で伏せていた犬の耳がピンと立ち上がった。

「ケンちゃん、怖くないよ。おいで、きれいよ、ほら。」

犬はゆっくりと縁側を降りて、しゃがんだおばあさんの前へ回り込んだ。

パチパチと音を立てて勢いよく飛び出す火花に警戒しながら近づいた。

火花はすぐに細い線となり、火の玉が震えながら落ちて消えた。

広がる暗闇にコオロギとスズムシの声が響く。

「きれいだったろ?」

犬はその場に伏せると次を待った。

「ははは、そうかい、もっとみたいかい?」

ロウソクの炎が、日に焼けたおばあさんのまるい頬を照らす。

火薬を包んだこよりの先に火が移り、小さな炎の蕾が震えながら丸く膨らんでゆく。

犬はわずかに足踏みして、座り直した。

じりじりと金色に燃える火の玉の周りを、破裂した枝状の火花が四方八方に勢いよく飛び出した。

揺れる風が火薬の匂いを運び、犬の艶やかな黒い瞳に、線香花火の火花が映った。